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Vol.80「生命満開」

【 コラム 】 2024.04.17

学びの応援コラム

楜 澤  晴 樹

令和6年4月17日

 

NO.80 「生命満開」

 

我が家のある佐久地域は、県内でも冬の寒さが「一級品」の地で、因みに高校時代、4kmほど離れた駅まで自転車を走らせたが、吐く息に含まれる水蒸気はマフラーをガリガリにするだけでなく、まつげのところに凍りついて、時々手でこじ開けて視界を確保しなければならなかった。

「冬来たりなば春遠からじ」と春の訪れに想いを馳せながら冬の厳しさを凌ぐ。そうして迎える4月なのである。自然界に新たな生命が息吹く好季は、新年度スタートの前向きな気分を盛り上げてくれる。

 

〇 「お花摘み放題!」

先日、4月2日のこと。春休みで我が家に預かっていた孫2人と一緒に散歩に出かけた。今年小2になる子と、前日に幼稚園の年中になったばかりの子だが、スキップ交じりの快活な足取りは、すでに私の歩行スピードを超えて疲れ知らずであった。途中道路沿いの土手に咲く花々に歓喜の声を上げて立ち止まってくれることが、私には有り難い一休みになった。

 

「お花摘み放題!」の声を上げたのは4歳の孫。「焼き肉食べ放題」をアレンジしたのだそうだ。写真はその時のもの。オオイヌノフグリ、ホトケノザの群生が子どもに声を上げさせた。

 

 

 

 

 

2人にホトケノザの名前を教えたのは初めてだったが、小2の孫は「ヒメオドリコソウに似ているけど、花の色はこのホトケノザの方が濃いし、葉っぱの形が違うね。」と可愛らしい発見を披露してくれた。

4歳の孫は、「これママにあげる。」と言って摘んだ花を大事そうに持ち帰った。

 

〇 タンポポの一輪挿し

2人の孫と春の野の花を愛でながら、ふと岩村田小学校にお世話になっていたときのことを思い出した。

 

4月、子どもたちは意気揚々と、心弾ませながら学校に向かう。途中いくつも道ばたに春を見つけては思わずその花を摘む。子どもの好奇心や探究心は本当に底が知れない。

ある朝、5年生の男子2人がタンポポを摘んで校長室に持ってきてくれた。

「校長先生、タンポポ咲いてたよ。これあげる。」

一番咲きのタンポポを見つけ、それを大事に校長室に届けてくれた子どもたちは、足元の春を見つけた喜びをお裾分けしながら、新年度を意欲的に迎えている様子を窺わせてくれた。

「これを持って行くと校長先生喜ぶよ」・・・この素敵な心をさっそく一輪挿しにして応接台に飾った。その日、たまたま6年生が「人権花いっぱい運動」でプランターや栽培用の土などをいただく儀式があったので、その一輪挿しを持参して「これは人が喜ぶのをうれしく思う心です。」と紹介しながら、そういう心を広める花いっぱい運動にしたい旨話をしたことを思い出す。

 

〇 生命満開

「生命満開」・・・大好きなこの言葉は、私が信大附属長野中に勤務していた折、4月、新しく見えた副校長先生が各研究室を巡りながら届けてくださった言葉である。冬の厳しさを乗り越えて迎えた春、自然界の様々な生命が息吹き、学校は希望に満ちた新年度を始動させる。「生命満開」はそんな時節にぴったりで、ワクワク感を増幅し学ぶ意欲を高めてくれる素敵な言葉だ。

 

身の回りの動植物に心を寄せ、春を見つけて歓喜の声を上げる子どもたち、そしてその喜びを大人にもお裾分けしてくれる子どもたちの何と健康的ですばらしいことか。改めて春の自然がもたらす力の大きさを感じながら、春真っ盛りの今が、新年度が立ち上がった子どもたち一人一人にとっても生命満開のときであってほしいと願う。