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Vol.61「信州理科教育研究会の歩みに学ぶ」
【 コラム 】 2023.07.26
学びの応援コラム
楜 澤 晴 樹
令和5年 7月 26日
NO.61 「信州理科教育研究会の歩みに学ぶ」 |
前号「探究的な学びの重視」で、高校での学びが変わろうとしているその方向性を大歓迎するという想いを述べさせていただいた。そして、「探究」が「総合的な探究の時間」をはじめ、一部の教科等だけで志向されるものではないことも補足した。
繰り返しになるが、この「探究的な学び」は、学習指導要領で目指す学びの中核になっている「主体的・対話的で深い学び」(Active Learning)の具現に迫るひとつのアプローチである。
ところで、その探究的な学びを、会の発足当時からずっと希求し続けている研究会が本県にある。標記の信州理科教育研究会(略称信州理研)だ。同研究会の会長をさせていただいたこともあるので少し手前みそになるが、簡単な紹介をさせていただき、「探究」への追い風にしたいと思う。
〇 信州理研が希求し続けているテーマ
「理科教育に関する研究を深め、その向上発展をはかる」(同研究会会則より)ことを目的として、信州理研が発足したのは昭和49年のこと。毎年、研究テーマを据え(更新せずに継続することもある)、北信、南信、東信、中信の各ブロックを巡りながら研究大会を開催し、テーマ具現に迫る授業を小学校と中学校で公開して実践研究を深めてきている。
第1回の研究大会は長野市の城東小と柳町中を会場に開催された。この年の研究テーマは、「児童・生徒が主体的に探究するための問題把握はどうあったらよいか」であった。「探究」の2文字が確認できる。
そして今年、同研究会は発足50周年を迎え、その記念大会が諏訪地区の宮川小と長峰中を会場に開催される。令和5年度の研究テーマは、「自然を主体的に探究する力を育て、豊かな未来を創る理科教育」である。やはり「探究」が登場する。
最初、そして最新の研究テーマを紹介したが、実は、信州理研の半世紀に及ぶ歩みは、自然を探究する理科学習を希求し続けてきており、「探究的な学び」の具現がその骨格をなしているのである。因みに昭和45年の学習指導要領改訂以降、中学校理科の同要領には「探究」、「探究の過程」等の言葉が生き続けている。
〇 「習得中心でなく、考えて問題解決をしていく子どもに」
もう10年以上も前になるが、信州理研の会長として文部科学省の理科教科調査官の講話を拝聴する機会を得た。お話の冒頭、「小中学校の現場では、全国的に見て、校内研究で理科を取り上げる学校が増えている」との紹介があった。
その理由は、「習得中心でなく、考えて問題解決をしていく子どもを育てる研究をリードする教科として期待が寄せられているから」というものであった。
そして、「自然事象に接した子どもが自分ごとの問題を見出すこと」をはじめとして、「子ども自ら問題解決の過程を歩んで結論を導くこと」の重要性を力説された。
「探究」でなく「問題解決」という言葉が用いられているが、教師教育リサーチセンターの年報に掲載された論文では、「問題解決的な学習」と、今回の学習指導要領改訂で文科省が提唱している「探究的な学習」とは基本的に同一であることが述べられている。特に、教科調査官が話された「問題解決の過程」は、自然事象に接した子どもが、そこに自分ごとの問題を見出すところから始まるわけで、まさに今日の学習指導要領にみる「探究の過程」と区別する必要もなさそうである。
「解決しないではいられない問題が生じたとき、人間は思考する。思考力は、子どもが主体的に問題解決に取り組む中で自(おの)ずから育つ。」という教科調査官の言葉は、教師に限らず、子どもと直接・間接に関わる大人として心に刻みおきたいことではないかと思うが、いかがか。