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Vol.93「今日のことば」~3~
【 コラム 】 2024.10.16
学びの応援コラム
楜 澤 晴 樹
令和6年10月16日
NO.93 「今日のことば」~3~ |
私が信大附属長野中の教務主任として作成した「平成9年度日報」から、抜粋してお届けする「今日のことば」第3弾だ。
以下の記号によりことばの出所を示している。
(〇:私、 □:生徒、 ◇:私や生徒以外)
◇ 【絵を描くことは楽しいが、楽なことではない。~美術科の先生より~】(9月24日)
この日は全校写生大会だった。前日に美術科研究室に伺っていただいた一言である。昨今、写生大会を行わない学校が多くなったが、個人的には精選の対象にはしてほしくないと思っている。素人ながら、美を追求し自問を重ねながら終日絵画制作に没頭することの教育的意義は大であると考えるからだ。その中でこそ磨かれる「思考力・判断力・表現力」もある。
それにしても、楽しいことと楽なことを同じ漢字で表現するのはいかがなものかと考えてしまうが、・・・。
〇 【静けさには、こわしてはならない威厳というものがある。よって、朝読書の時間に欠席等の連絡で教室を訪問するのはやめた。】(10月13日)
学校中がシーンとする朝読書の時間である。その静寂の中、欠席や遅刻の連絡を遅く受けた場合には、教務主任が当該の教室を訪ね、担任にメモを渡しながら口頭伝達していた。学級担任は朝読書の時間に遅れないように移動して、生徒とともに読書に没頭している時間であった。緊急の場合を除いてその教室訪問を止めたことは、全校が朝読書に集中することで生まれる静寂への大賛辞であった。「私語を制止するような指導は全く要らなくなりました。」と、ある担任から感謝された。
〇 【1回で揚げられるパンは21個までだそうだ。739個の揚げパンをつくるには、何と36回に分けて調理することになる。感謝、感謝。】(10月24日)
主食の中でも揚げパンは、生徒たちに大人気であった。しかしながら、それを提供する給食室の大変さはあまり話題になっていなかった。私自身も、給食室に伺って初めてこの驚くべき事実を知った。揚げパンにしないならば不要のご苦労である。この日報を発信した翌日、ある学級から調理室に感謝の手紙が届けられた。その手紙を手に調理室の主任さんが私のところに見えて、日報掲載のお陰だと喜びを語ってくださった。わずか58文字のメッセージも、少なからず食育に貢献できたようだ。
〇 【教官室の裁断機の刃を新しくした。研ぎ磨かれた刃は、わずかな力で大きな仕事ができる。】
(11月10日)
刃物のことを述べているが、色々な物事や、場合によっては人のありようにも通じて一考する機会が与えられればと願って発信した。
□ 【ソーセージ食べる姿を想像し アジの干物に箸を伸ばせり ~ドイツに滞在されている副校長先生に向けた1年生作の短歌~】(11月21日)
添え書きの内容に首を傾げた方がおられるかと思うが、このとき、副校長先生は時の文部省(現文部科学省)の研修派遣でヨーロッパ数か国を歴訪されていた。教務主任は、毎日FAXで宿泊先のホテルに「日報」を送り現況報告をしていたが、たまには生徒の言葉を載せようと考えた。ドイツに滞在されている先生にということで募集したメッセージの中から採用したのが、この短歌である。「副校長先生はいいなあ」という想いをたっぷりとにじませながら、日本で学校生活をがんばっている我が現実を伝えている見事な作品だ。そのさわやかなユーモアに惹かれた。
蛇足だが、当時、とにかく遠く海外のホテルにおよそリアルタイムでFAXが送れることに感動しながら、恐る恐る送信操作をしたことを思い出す。