NEWS

Vol.87「成功した時に」

【 コラム 】 2024.07.24

学びの応援コラム

楜 澤  晴 樹

令和6年7月24日

 

NO.87 「成功した時に」

 

間もなくパリ五輪が始まる。戦争の惨劇が毎日報じられる中、本当に「平和の祭典」たるオリンピックとして、その効果を願わずにはいられない。

 

ところで、先日、体操五輪金メダリストの内村航平氏が、パリ五輪のNHK中継でアスリートナビゲーターを務めるとの発表があった。現地から競技の見どころや選手の奮闘ぶりなどを視聴者に伝える役割を担うとのこと。これに関わる氏へのインタビューでは、氏がアスリートとして大事にしていたことなども伺うことができた。

本号ではその話の中で氏が語られた「成功した時に・・・」という話に注目して、その、挑戦を進化させていく姿勢に学びたいと思う。

 

〇  「あーよかった、で終わってはだめだ」

氏は、試技を終えた時、それが失敗であっても成功であってもその要因をしっかり分析する必要があると語られた。

前者の、失敗した時の振り返りは、私たちもよく行うことで、それが次なる挑戦を成功に導くカギになる。故に「失敗は成功のもと」なのだ。私たちの多くが、これに当てはまる色々な事例を有しているかと思う。

教職に在りし日の私も、このコンセプトに立って子どもたちの様々な挑戦を支援してきた。失敗を慰める声掛けに終わるのではなく、失敗の原因を分析的に振り返るお手伝いをすることで、そこに新たな挑戦心を湧き起こさせるのだ。例えば理科学習で班別の実験を行う時など、もちろんすべての班が理論値に収束する結果を得る場合もあるが、negative data が出て、その原因を考え合って再実験を行う場合がある。当該の班は新たな仮説のもと意欲的に再実験に挑戦し、またそれを応援する班も出てくる。結果、確かに「失敗は成功のもと」で、時間は余計にかかってもそれを補って余りある深い学びが展開できる。

 

さて、本号で注目したいのは、氏が大事にされている成功した時の振り返りである。私を含め、そこができていない人間が多いのではないかと思った。内村氏は、失敗した時の要因を分析することはもちろんだが、「成功した時に『あーよかった。』で終わってはだめだ。」と強調された。

何がどうよかったから成功できたのかをしっかり分析できなければ、その成功はたまたまの結果に終わってしまうというのである。なるほど、世界の内村航平氏だと感じ入った。

 

〇 再現性

さて、私たちの日常を振り返った時、様々な挑戦において、「成功」して「あーよかった。」で終わっているケースは少なくないように思うがどうだろうか。成功しているのだからそれでよかろうという気もしなくはないが、多くの場合に成功の再現性を高める必要がある。

私ごとで思い付くままに例を挙げてみると、今年自家用の大玉トマトの出来が良いが、その要因が何なのかはわかっていない。例年ミニトマトは問題なく収穫できるが、大玉はあまり成績が良くない。今年たまたま順調であるというのでなく、その要因が分析できれば、来年再現できる可能性が高まる。

また、定年退職してぼつぼつ始めたゴルフも、良かったり悪かったりショットが不安定。Good shot! と言われることもあるが、どこがどうよかったからそのショットが生まれたのか自覚できていない。たまたまの結果で終わっているので、再現性が低いのだと思う。

 

内村氏の「成功した時に」その要因を振り返る姿勢は、「たまたま注意報」として心に刻み置きたい。