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Vol.77「卒業式に寄せて」

【 コラム 】 2024.03.06

学びの応援コラム

楜 澤  晴 樹

令和6年3月6日

 

NO.77 「卒業式に寄せて」

 

早いものでもう3月、いよいよ草木が芽吹く時「弥生」を迎えている。小・中学校においては年度の締めくくりをし、子どもたちが希望をもって新たな自分づくりに向かっていく節目の時である。先日、地元の小学校からは卒業式の来賓案内状が届いた。

 

〇 大勢の愛情に育まれて

卒業式は「学校の行事の中で一番大切な儀式」とよく言われるが、大切さに順位を付けることの是非はさておき、確かに他の行事とは一線を画す重さがある。何しろ、6ヶ年間の小学校課程、3ヶ年間の中学校課程の修了を認める卒業証書が授与される儀式なのである。

 

その大切な儀式は、全校児童生徒、教師、保護者、そして関係する大勢の地域の方々が一堂に会して挙行される。入学以来、学校、家庭、地域の大勢の愛情がずっと注がれてきて迎える卒業は、ある意味、教育の総決算とも言えよう。卒業式の、特に卒業生のありようは、学校教育の成否を物語ると言っても過言ではないように思う。

 

小中学校では、最高学年の子どもたちの言動が学校の気風・文化を代表するし、その形成に大きく寄与する。よって卒業生には、司馬遼太郎氏の言葉をお借りすれば、「晴れ上がった空のように高々とした心」をもって学校を巣立ってほしいと願う。大勢の愛情に育まれてきたことに改めて感謝し、志・希望をもって古巣から飛びたてる卒業でありたい。

 

〇 先輩からの大応援歌

以前も紹介したが、私は教職の最後に佐久市の岩村田小学校にお世話になった。同校2年目の3月、卒業式を間近に控えたある日のことであった。今は亡き土屋徳重先生(同校第21代校長)から書簡が届いた。そこには卒業式に寄せた先生の想いが綴られていた。

 

先生は、本県の義務教育の発展に多大な貢献をされた方で、多くの教師が先生の薫陶を受けた。私が初めて校長として南信の聖南中学校に着任した際にも、校長室の机上には先生からの激励の葉書が届いていた。また、県庁の義務教育課、岩村田小学校の校長室、佐久市の教育長室には、幾度となく足を運んで応援してくださった。子どもたちの育ちの具体を笑顔で語られる先生は、今も私の心の中に生き続けている。

 

 さて、卒業式に向けた次のメッセージは私たちへの大応援歌として職員会で紹介し、全教職員で共有した。

「いよいよ卒業式。楜澤校長先生のもと、立派な卒業をしていく卒業生の姿が目に浮かぶようです。以下年寄りの想いを届けます。

静と動のハーモニーの一瞬のときを大切に。洗い流した、澄み切った気持ちで、もろもろの人や物に、『ありがとうございました』と表せる日に。そして、これから立ち向かう未知の世界への闘志と決意が、卒業生はもちろん、在校生、全職員、PTAの皆さんの一体感に包まれた感動の時の中で、より確かなものになるように期待しています。」

 

〇 意義深い別れ

 3月は別れによって、4月は出会いによって人間が大きく成長する時かと思う。学校に限ったことではないと思うが、私はよく3月と4月の違いをそんな風に表現した。別れも、出会いも人間にとって貴重な出来事である。

 

3月、学校では卒業生が巣立ち、また教職員も異動によって転・退任する。つまり別れにも直面することになる。卒業する喜びを噛みしめたり卒業を祝ったりしながらも、子どもも、保護者も、教職員もその別れと向き合ってそれを自分の力で乗り越える必要があるのだ。そこに別れの意義深さがある。

不思議なご縁で出会い、共に考え、語り、学び合えたことに感謝しながら対峙する別れは、人間をより人間らしくするように思う。