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Vol.75「自分に胸張って」

【 コラム 】 2024.02.07

学びの応援コラム

楜 澤  晴 樹

令和6年2月7日

 

NO.75 「自分に胸張って」 

 

新年のスタートとともに、多くの学校が年度最終となる3学期を迎えている。(2学期制の学校では後期の終盤になる。)

 

以前、本コラム25号の中で、3学期の始業式に「自分に胸張って」と題して自己有用感に関する話をしたことを紹介した。同講話は、全国学力学習状況調査の質問紙調査の結果から、自己肯定感、自己有用感について全国的に心配な状況にあるという問題提起を皮切りに、自分に胸張れるまとめの3学期にしてほしいという願いを訴えたもの。「3学期は1年間の学習の締めくくり。見えるところでも見えないところでもよいので、自分にはこんな胸を張れることがあると語れる学期にしてほしい。」と結んだ。

 

さて、その25号では、「子ども再発見」の一例としてある6年生の女児の言動を紹介した。再掲になるが、「校長先生、お話ありがとうございました。自分に胸を張れることを考えています。それから4人に1人(が自己有用感が低い)というのは心配ですが、あの回答は私も、そして多くの人が少し遠慮した結果だと思うので、校長先生そんなに心配しないでください。」と、校長の心配を和らげに来室してくれたのである。

 

本号では更に、この校長講話後に寄せられた4年生の子どもたちの考えを紹介し、自分に胸張る自分づくりの応援歌にできればと思う。

 

○ 「講話を聴いて考えたこと

始業式後、2時間目休みのこと。4年生のあるクラスから、「講話を聴いて考えたこと」が記されたノートが届いた。まだ湯気が立っているようなタイミングで届けられたことにまず驚いたが、もうひとつ感心させられたことがあった。それは、「・・・考えたこと」というタイトル。もちろん発達段階にもよるが、「感想」よりハードルを上げていることに、いよいよ高学年になる気配を感じた。その一部を紹介させていただくが、「自分に胸張って」に様々な角度から迫る子どもたちの考えに、私自身が学ばせてもらった。(文責:楜澤)

 

Aさん:「私は今までいいところがないと思っていました。しかし校長先生のお話を聞いて、私のいいところって何だろうと考えました。じっくり考えてみると、字がていねいということを思いつきました。自分にもいいところがあるんだと思いました。」

Bさん:「100人中25人の人が、自分にはよいところがないと思っているけど、ちがう人からみるといいところやしんせつだなとか思うことがあると思います。友だちによいところがあると思うかどうかの調査もやってみてください。」

Cさん:「校長先生は50年以上も書き初めを欠かしたことがないと話されましたが、何でも50年間も欠かさずやっていたら、それはどうどうと胸を張って言えることになるなと思いました。僕もこれから1年に必ずやるものを決めて実行したいです。」

Dさん:「自分にいいところがないと思っている人は、大きいことじゃないといいことだと思えていないのではないかなと考えました。」

Eさん:「自分にいいところがあるか、それともないか考えました。友だちを思いやって、やさしくしてあげたこともあったので、自分にはいいところがある!!と思いました。」

Fさん:「好きなことは続けられるから得意になる。そうすればいいところがふえると思いました。3学期もいろいろなことに興味をもって、いいところをたくさん見つけたいです。」

 

〇 令和5年度調査から

全国学力学習状況調査における自己肯定感、自己有用感に関する状況はその後少しずつ向上してきてはいる。参考までに、児童生徒質問紙の2つの問いに注目して、最新の調査結果(R5;文科省)を紹介しておこう。

Q1「自分にはよいところがあると思いますか」

A1「ある」、「どちらかといえばある」 → 小6:83.5%  中3:80.1%

 

Q2「先生はあなたのよいところを認めてくれていると思いますか」

A2「認めてくれている」、「どちらかといえば認めてくれている」

→ 小6:89.8%  中3:87.2%

 

私が十数年前の講話で取り上げた結果と比較すると確かに向上している。しかし、それをもって心配な状況ではなくなったと捉えるのは甘い。「よいところがない」を含め否定的な回答をしている1~2割の子どもたちの命輝く今をいかに具現するか、重大課題である。

また、学校教育だけの問題に終わらせず、Q2の「先生」を、「親」や「家族」に置き換えたとしたらどんな回答になるか、それぞれが予想(実際に問うのではなく)してみたい。子どもに対するありようを自問することにつながる。

 

意外にテストの点数など見えやすいところばかりの評価で、見えにくいところにある、人間として価値ある輝きを見落としてしまってはいないだろうか。