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Vol.72「酔歩理論」

【 コラム 】 2023.12.27

学びの応援コラム

楜 澤  晴 樹

令和5年12月27日

 

NO.72 「酔歩理論」

 

私たちの生活の中には、いろいろな節目がある。新学期や新年を迎える節目、卒業や成人を迎える節目、また誕生日など、重要な節目がたくさんある。

さて、今年も残すところ5日となった。間もなく令和6年の新春を迎える。この節目は、万人にとって意義深い。私たちは過ぎし日々を振り返り、新しく始まる日々に向かう心をつくる。時は連続的に流れているが、その流れのなかに終わりと始めというある種の不連続が創出される文化は、新たな出発の鮮度を高める。

 

ところで、迎える年を他力頼みではなく”A happy new year”とするために欠かせないのが目標の新設や更新である。その目標には、到達目標(結果目標)と行動目標と呼ばれる2通りがあって、前者だけにとどまらないことが重要であることは、以前、本コラムNo.18「米粒の努力」で述べた。到達目標を達成するために何を為すかという行動目標を明確にもつことが肝心なのである。そんな考えのもと、本号では、目標が明確でないとどうなってしまうかというちょっと変わった話をしようと思う。

 

〇 Random Walk Theory (酔歩理論)

大学時代、物理化学で粒子の不規則な運動を解析する一手段としてこの理論を学んだ。今日、物理や化学だけでなく、経済学をはじめ様々な分野で応用されている理論のひとつである。教職に在りし日、中学生には、目標をもたない歩みが行き着くところには前進がないことが科学的に説明されているとして、よくこの話を紹介した。

 

Moore(ムーア)の物理化学の著書では、長旅を終えた水夫が久し振りに浜に着いて居酒屋で大酒を飲んだ後という場面設定で、「酔歩理論」を説いている。

大酒を飲んだ結果、水夫は「酔夫」になってしまう。右も左もわからない状態になって店を出た彼の歩みは「酔歩」となって何千歩も何万歩も歩く。さてその結果、一体彼はどこにいる確率が高いかという問題を解明するのが酔歩理論である。

 

一歩一歩の歩みに何ら意思がはたらかないものとして、数学的な計算をしてみると、彼は元の場所、つまり居酒屋付近にうろついている確率が高いという結論を導くことができる。

 

〇 前進する歩み

目標がなく、惰性で繰り返されている歩みからは前進が生まれない。もちろん、繰り返すことが目標となって実践が積まれるのはよいが、とにかく日々の一歩一歩が何を目指し、その実現のための有意な歩みであることが大切である。

 

新年を迎えるに当たり、改めて、到達したい目標と、到達するために何を為すかという行動目標を明確にしたい。

 

Have a happy new year!