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Vol.71「〇〇で包丁を研ぐ」
【 コラム 】 2023.12.13
学びの応援コラム
楜 澤 晴 樹
令和5年12月13日
NO.71 「〇〇で包丁を研ぐ」 |
早いものでもう師走。そろそろ大掃除やしめ縄づくりの算段、また年賀状の作成もしなくてはならない。更にもう1つ我が家で私が受け持ってきたのが、お歳暮に頂戴した鮭をさばいて切れ目にする仕事だ。
出刃包丁の出番である。きれいな切れ目にするためには、その切れ味が大事で、中学生の時分から包丁や鎌を研いできた経験がものをいう。
さて、本号ではこの包丁研ぎに絡む話をしよう。まず、ブラジルでよく見かけたちょっと変わった包丁研ぎを紹介したいと思う。包丁を何(なに)で研ぐか、という問いかけを皮切りに、校長講話でも実演付きでこの話をしたことがある。
〇 表題の「〇〇」には何が入るだろうか?
次の写真は、「〇〇」の部分が見えないように紙を被せ、講話の導入に用いたものである。そこに何が入るか子どもたちに考えてもらうことから話は始まる。読者諸氏は何が入るとお考えになるだろうか。
子どもたちは興味津々で、字数は指定していないので、「手」、「砥石」、「ヤスリ」、「機械」等々様々な見当を付ける。この講話での正解(?)は、「包丁」である。もちろん私の期待通り正解者はいない。
それは、外務省の派遣でリオ・デ・ジャネイロ日本人学校にお世話になった3年間、肉屋さんにお使いに行った際によく目にした光景である。因みに、牛のフィレ肉が、現地では1kg約500円程度だったから、家でもよく分厚いステーキをいただいた。肉屋さんでステーキ用の肉をお願いすると、希望する厚みに切ってくれる。続いて見事な包丁さばきを見ることになるのだが、その手始めが5秒前後かけての「包丁で包丁を研ぐ」光景であった。
2本の包丁の刃と刃をシャカシャカシャカと巧みにこすり合わせて包丁の切れ味をよくするのだ。肉を切る際には、この包丁同士のこすり合わせで一段とよい切れ味が得られるとのこと。もちろん、包丁が両刃か片刃かで研ぎ方のコツも変わるようである。
〇 切磋琢磨
校長講話では、子どもたちに包丁の切れ味を確かめてもらうことは避け、代表の職員に登壇してもらって実演・実感してもらうことにした。
まず切れ味のあまりよくない包丁で玉ねぎを刻んでもらうが、なかなか思うように刻めない。次は「包丁で包丁を研ぐ」私の出番だ。職員が苦戦した包丁を、別に用意した切れ味の良い包丁でシャカシャカと研いでみせる。研いだ包丁で再度玉ねぎを刻んでもらうと、その見違えるほどの包丁さばきに会場から大きな拍手が沸き起こる。
さて、この「包丁同士」の研ぎ合いを、集団における「人間同士」の高め合いに置き換えて講話のまとめをすることになる。
学校での学びは、学校、学年、学級、学習グループ、・・・と、様々な学習集団で展開される。その集団が互いに切磋琢磨できる集団であるかどうかが重要であることは言うまでもない。教師も子どもも、さらには関わる大人たちもその視点を大事にもっていたい。
一人一人が一人一人の「切れ味」を高める。