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Vol.57「書道教室にて」~日本文化紹介~
【 コラム 】 2023.05.31
学びの応援コラム
楜 澤 晴 樹
令和5年5 月 31日
NO.57 「書道教室にて」~日本文化紹介~ |
先日、書道教室に学ばれているお一人が、オーストラリアからホームステイで来日しているという客人を連れて見えて、書道教室の見学をさせてもらいたいとのこと。もちろん大歓迎で、見学にとどまらず書道体験もしていただいた。
庭の石(ストーン)を指さしながらユーモラスに自己紹介された彼の名は、ストーニーであった。今回が4回目の来日だという。大変日本びいきの方だが、書道を体験するのは初めてとのこと。教室の皆さんとは別メニューで「平和」という漢字に挑戦していただいた。
写真は、1時間ほどの練習を経て仕上げたその時の作品である。
出来上がった作品を披露すると、教室の皆さんから大きな拍手が沸き起こり、ストーニーさんは大喜び。こうやって外国の方に日本文化の一端に触れて体験していただくのはとても意義深いことだなと改めて感じた。
ところで、本コラムは娘の「英語」教室の求めに応じて発信しているものなので、私がこの時、ブロークンイングリッシュを駆使して日本の書道について紹介し、書道体験をリードした様子を本号でお伝えしようと思う。「学びの応援コラム」の趣旨としては、英語が得意でなくても、せっかく中学から大学まで習ってきた英語を頼りに、日本人として日本文化の紹介に誠意を尽くした姿勢を汲んでいただければ幸いである。なお、以下に紹介する英語は娘の添削を受けていないので、間違いやおかしな表現があろうかと思うが上述の趣旨をご理解の上ご容赦願いたい。
〇 The Explanations on Shodo for the guest from Australia.
最初に、日本語の文字が3種類あること、そして書道における筆づかいの「止め」、「はね」、「はらい」を説明し、実戦に入った。
手本として用意した書には、一画一画に朱で番号と矢印を添えて、それぞれ書き順と運筆の方向を示した。
Japanese is written in three styles of letter, Kanji, Hiragana, and Katakana.
Kanji is ideographic character introduced from China to Japan about 1200 years ago. Today, please try to write Kanji in Japanese calligraphy style with a special brush called Fude and calligraphy ink called Sumi. The way of writing is called Shodo.
I selected the word ‘HEIWA’ consisting of two Kanji characters for today’s exercise. ‘HEIWA’ means peace. You can understand why I selected it. Peace is one of the biggest themes in the world.
Fude can express strength of line differing from hard pen. The first and last strokes of brushing are very important. Especially pay attention to the three ways of brushing. They are ‘stop’ called Tome, ‘upward brushstroke’ called Hane, and ‘sweeping’ called Harai.
I prepared the reference paper for you to see the writing order by numbers, and the writing direction by arrows. Let’s try to write after me.
〇 異文化理解・・・その前に!
ストーニーさんの書道体験をリードしながら、ふとリオ・デ・ジャネイロ日本人学校で国際理解教育を重点目標の一つに掲げて子どもたちとともに学んだことを思い出した。グローバルな人材の育成に迫る取り組みとして、「違いに学び違いを理解しよう」というコンセプトを骨格にして、異文化理解を大事にした。
ブラジル現地校はもちろん、アメリカンスクールやスイス人学校との交流学習を行う機会にも恵まれた。また、ブラジル人の講師によるポルトガル語の学習もカリキュラムの中に組み込まれた。日本ではなかなかできない体験を、私たち教師も多くさせていただいた。
初めて出合う事実に驚きや感動も覚えた。しかしながら、こうして新たな情報を獲得しながら、私たちの多くがある問題を自覚することになるのだ。それは、豊富なINPUTに対して自分から発出するOUTPUTが貧弱なことである。私ごとの一例を挙げれば、日本や日本人を尊敬してくれる現地の友人から歌舞伎について尋ねられたのに、その説明ができなかった。日本文化を語れないのである。今思うと、貴重な「無知の知」であった。
自国日本のことを知らずして、また、日本を語れずして異文化理解も国際理解もないという40年も前の学びは、此度も私の心に火をつけてくれた。