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Vol.48「高校受験に臨む諸君へ」

【 コラム 】 2023.03.01

学びの応援コラム

楜 澤  晴 樹

令和5年 3月 1日

 

NO.48 「高校受験に臨む諸君へ」

 

令和5年度の長野県公立高等学校入学者選抜の後期選抜が3月7日(一部翌日も)に迫った。過日の発表では、全日制課程の志願者が9,792人で、平均倍率は0.97倍とのこと。本コラム原稿がアップされるのは3月1日(水)だと思うが、同日正午には志望変更が締め切られ、高校別学科別の最終志願状況が固まる。頑張れ受験生!

 

さて、「学びの応援コラム」としては、このタイミングで受験生諸君にエールを送りがてら若干の安心材料を提供したいと思う。それは、心配されることの多い「体調」の問題についてである。実は私自身が高校受験当日に高熱を出してしまった。そんな私の経験談は、これまで受験に臨む多くの中学生を壮行する際にも披露し、結構好評を博してきた。なお、新型コロナウィルス感染症罹患者等は追試験対応があるので、ここでは受験制限のかからない場合での話ということでご理解願いたい。

 

〇 我が高校入試当日のこと(参考まで)

それは、昭和44年度長野県公立高等学校入試の日であった。この年度表現は、44年度に行う入試という意味ではなく、44年度4月の高校入学に向けた入試、即ち43年度末に行う入試の意である。当時は、前期・後期の区分もなく、すべてその一日で入試が行われた。

 

1時間目の国語のテストを終えたあたりかと記憶している。中学の学級担任の先生から、休み時間には屈伸運動をするとよいというアドバイスをいただいていたので、実行した。この時、体の節々に妙な痛みを感じた。後になってわかるのだが、結論を申し上げると風邪を引いてしまい、その発熱により現れた症状であった。

 

休み時間にはその痛みが若干気になったが、テスト中はそんなことお構いなしで一心不乱に問題に向かった。別に体調のことは考えないようにしようと努めた訳ではなく、体に異常があったことを認識したのが試験後だったというだけのことだ。存分にベストを尽した。高熱が出るといつもは食欲もなくなることが多かったが、この特別な日は、食欲も落ちなかった。母が用意してくれたスペシャル弁当で、心もお腹もいっぱいになった。そうこうして入試日程のすべてが終わるが、手応えは十分であった。やや乱暴な言い方になるが、「人間本気で事に臨んでいるときは少しぐらい具合が悪くても大した問題ではない」と、この時の経験から考えるようになった。体調がベストであることに越したことはないが、仮に風邪など引いてしまってもそう心配せずに努力を積んできた自分を信じたい。

 

さて節々の痛みだが、発熱が原因で起こっているということがわかったのは高校の先輩が連れて行ってくれた上田駅前の喫茶店でのことであった。この日、朝は曇り空であったが、試験の途中から雪が降り始め、ものすごい積雪となって信越線の電車に遅れが出た。帰りの電車を待つ時間が結構生じたため、我が浅間中出身で上田高校に進学した先輩が、同校を受験した私たち後輩を気遣って喫茶店に案内してくれたのだ。その先輩に体の節々が痛むことを話したところ店で体温計を借りてくれて、かなりの熱があることが判明したのである。

 

少し脱線するが、私はそれまで喫茶店なるものに入ったことがなかった。大変失礼ながら、そこに出入りするのは、高校生であってもあまりよろしくないことだと思い込んでいたので、この時も一種の不安を覚えながら先輩の後に続いた。しかしながら、その先輩の温かい言動もあって、そんな偏見は捨て去った。さてその先輩がおごってくれるというわけだが、私は喫茶店でのコーヒーの飲み方(特別な飲み方があるわけではないのに)を知らなかったし、風邪をひいてしまったと自覚したこともあって、何人もかっこよく「コーヒー」と注文する中、恥ずかし気に「ホットミルク」をお願いした。

 

〇 帰宅しての第一声

大雪で大幅に遅れ、小海線の岩村田駅に着いた時にはもう薄暗くなっていた。電車内では少々具合も悪かったが、30~40cmの積雪の中自転車で帰宅しなければならない。具合が悪いなどと言っている場合ではなかった。すると妙な挑戦心が沸いてきた。試験でベストが尽くせたという成就感も手伝って、その雪を蹴散らしながら自転車を押し、4㎞強の道のりを踏破した。通学で通っている湯川沿いの道は雪で埋まっていたので、距離は長くなるが大通りを選び、汗びっしょりになって帰宅した。たっぷり汗をかいたせいか熱も幾分下がったようだ。

 

母はもちろん、家族皆が居ても立っても居られないほど心配しているだろうなと思ったので、一早くその心配を吹き飛ばしてやろうと思った。玄関の戸を開けながら元気いっぱいの大声で報告した。

「ただいま、ちゃんと合格したよ!」