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Vol.18「米粒の努力」
【 コラム 】 2022.07.27
学びの応援コラム
楜 澤 晴 樹
令和4年7月27日
NO.18 「米粒の努力」 |
多くの小中学校が、1学期を終え夏休みを迎えていることと思う。夏休みが終わると、最も長い2学期が始まる。
平成23年8月19日、私は佐久市の岩村田小学校の2学期の始業式で「米粒の努力」と題した話をした。実はこの話は、当時県の教育次長をされていた荒深重徳先生が県教育委員会発行の「教育指導時報」(平成23年5月号)に寄稿された「米粒の努力」を原典として、先生の許可を得て校長講話向けに手を加えたものである。私が平成20年から県教育委員会の主幹指導主事を拝命していた折、時の義務教育課長が荒深先生で、多くのご指導をいただき大変にお世話になった師である。
- 原典「米粒の努力」のログライン(※)
【ある中学生が、「勉強で一日努力したらお米1粒を器に入れる」という母親の提案のもと3年間努力を積み重ねたところ、たまったお米は高校入試当日の弁当に使える量となり、彼は見事志望校合格も果たしたという話。】
※ログライン(log lineまたはlogline)とは
佐久ご出身のアニメーション監督新海 誠 氏の講演で、私はこの言葉を知った。書籍や映画、脚本やストーリーなどを一言で表した簡潔な要約のこと。例えば童話「ウサギとカメ」のログラインを楜澤が作文するとこうなる。
→【ウサギとカメが競争することになったが、ウサギがカメのノロ足をバカにして油断したため、コツコツと歩き続けたカメが勝利するという話】
○ 「米粒の努力」コラム版
<目標は行動目標にまで>
1年の始まりや学期始めなど、ある節目がスタートするときには、既にもっている目標を進化させたり全く新たな目標を掲げたりする。その目標には、到達目標(結果目標)と行動目標と呼ばれる2通りがある。
さて、ここで重要になるのは前者だけにとどまらないことで、その到達目標を達成するために何を為すかという行動目標をもつことである。日々どうするか、何を頑張るかという具体的なそれである。行動目標を決め出すには、「そのために(達成させるために)どうするか」という問いを、問う必要がなくなるまで繰り返せばよい。例えば、「苦手な数学の克服」という到達目標をもったとしてみよう。そのためにはと考えて、「数学の授業に集中する」としたとする。まだ「そのためには」と問える。そこで「授業でわからないことをそのままにしない」としたとしよう。さらにそのためには、と自問し、「その日のうちに研究室に質問に行く」とか、「毎日30分、○○問題集の問題を解いて復習する」などと具体化することができる。ここまでくると、大抵もう「そのためには」と問う必要はなくなるであろう。
こうやって行動目標が明確になることで、日々の自己評価の精度も上がることになるのだ。
<積み上げる努力を米粒で可視化してみよう>
ここで、「米粒の努力」の話になる。
次の写真を見てほしい。A,B,Cの皿にお米が盛られている。米粒の多い順に並べるとどうなるだろうか。
A B C
正解は、C→B→A である。
Cが多いのは一目瞭然で、お米200粒を盛った。AとBはきっと迷われた方が多いと思う。Aには100粒、そしてBには110粒のお米を盛った。
Aに10粒を加えても違いはわからないが、100粒を加えると違いがはっきりしてくる、とこんな表現もできる。努力する、がんばるとはこういうものなのだ。小さな努力でも、それをこつこつと続けていくことで目に見えるような違いが出てくるのである。
冒頭紹介した中学生は、学習における行動目標が達成できたかを毎日自己評価して、1日1粒のお米に置き換えた。こうして積み重ねた3年間の努力が、志望校合格はもちろん、人間形成における多くの実りをもたらしたことは言うまでもなかろう。
最後にまた、東井義雄先生の言葉を紹介したい。
「本物は続く。続ければ本物になる。」