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Vol.96「理科授業の支援」
【 コラム 】 2024.11.27
学びの応援コラム
楜 澤 晴 樹
令和6年11月27日
NO.96 「理科授業の支援」 |
佐久市教育長時代、理科専科教員がいない小学校に理科の授業を支援する教員の配置を行った。この加配は、現場の先生方からものすごく感謝されたが、何より子どもたちが嬉々として観察・実験に打ち込む授業づくりにつながるものであったことから、我ながら「学びの大応援」ができたと振り返っている。
教育長退任後も、市教育委員会の主幹指導主事から、「全国学テ」の結果にも理科支援教員配置の成果が認められるとの情報が届いている。本号では、同様な事業が他市町村、さらには県の事業として広まることを願いながら、同教員の配置に至る背景等を述べてみたい。尤も、小学校でも教科担任制が普及していけば話は別になる。
〇 小学校で学級担任が理科の授業を行う場合の特殊な状況
小学校の学級担任の先生はスーパーマンだなと思うことがよくある。なぜなら、自分の学級の、全てもしくは殆どの授業を行っており、例えば算数の授業を終えて5分後に理科、理科を終えて5分後に社会科というような日課が当たり前だ。長い休み時間を挟むこともあるが短い休み時間であっても、次に続く授業は待ってくれない。
そうした中、理科の追究のほとんどは観察・実験を通して行われるので、その準備や片付けに他教科等より多くの時間を要することが少なくない。もちろん子どもが授業の中で行うべきこともあるが、教師が授業の前後で準備・整理する内容が多く、担任が悪戦苦闘している現実がある。前日の放課後を使っていても、である。
〇 理科授業を支援する教員の配置
そこで、県費の理科専科教員が配置できない小学校に、学級担任が行う理科の授業をサポートする教員を市費で配置する事業を考えたのである。サポートの中身は、観察・実験の準備や片付け、授業でのアシスト、理科準備室の整理等である。理科免許をもった教員が望ましいが、小学校免許のみでも可とした。
運用に当たって最も留意したのは、「学級担任に代わって理科の授業を行うための配置ではない」ことの徹底である。よって、学級担任が授業計画をもとに「支援」の内容を打ち合わせて活用することになる。人選は教育委員会が行い、教育長が毎年4月第1回の校長会で配置の趣旨説明を行い、趣旨に沿った活用をお願いした。支援教員の定例研修も充実し、今日も多くの成果を挙げる事業となっている。
〇 ある日の授業参観から
令和となった年の5月下旬のことであった。理科支援教員を配置したある小学校の6年生の授業を参観した。この日同校では、朝全校集会があり、それに続く1時間目が理科であった。学級担任の先生は子どもたちと体育館に行っておられたが、理科室の教卓には、理科支援教員によってこの日班毎に行う燃焼実験に必要な教材と実験器具が整えられていた。私は、学校教育部長と2人で同校を訪ね、始業5分前に理科室にお邪魔してその見事な準備状況を目の当たりにした。
授業は、集気びん内で割り箸の破片を燃やし、その燃焼によってびん内の酸素と二酸化炭素の量がそれぞれどう変化するかを予想し、実験で確かめるというもの。気体検知管を活用し、実験は班毎に行われた。4人構成の班であったが、その一人一人が自分ごとの問題として主体的に問題解決を進めていたことが、実験中の動きのよさ、結果が出た際の歓声などから窺うことができた。事前の打合せがしっかりなされており、学級担任と理科支援教員のコラボレーションは見事であった。
〇 おわりに
理科支援教員の配置事業を、私の専門が理科だからと結び付けた方もおられたが、もちろん理科が他教科より大事だというようなおかしな発想に立っているのではない。まず、自然の事物・現象に出合って自ら問題を見出し、主体的に問題を解決していく力を育む教育を充実させることは、他教科等における問題解決学習、探究や探究的な学びにも生きてはたらくことが期待できると考えており、その授業の充実に支障をきたす特殊な状況を見過ごせなかったのである。