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Vol.92「今日のことば」~2~

【 コラム 】 2024.10.02

学びの応援コラム

楜 澤  晴 樹

令和6年10月2日

 

NO.92 「今日のことば」~2~

 

前号に続き、私が信大附属長野中で教務主任として作成した「平成9年度日報」から、その冒頭に掲げた「今日のことば」のいくつかを拾って紹介しようと思う。

以下の記号によりことばの出所を示している。

(〇:私、 ◇:私や生徒以外)

 

〇 【1年生の数人が2年生のクラスを訪ねる時の廊下での仕草を見て、妙にうれしくなった。ノックをしかけた手を止めて、「失礼します。〇〇ですが・・・」と小声で口慣らしをしていたのだ。礼を欠かないようにと数秒間の心準備をする姿に心動いた。】(6月5日)

もちろん、先輩が怖い存在だということではない。先輩であれ後輩であれ、よその学級を訪ねる際に礼を尽す。これは学校における大事な文化のひとつである。

 

〇 【内面が充実している人は表面も整っている。内面の充実を欠く人はとかく表面ばかり飾ろうとする。】(6月17日)

これに類する教えはたくさんあって、色々な味付けがなされて登場する。ところで信大附属と略しているが、正しくは信州大学教育学部附属長野中学校で、その使命のひとつに教育実習生の受け入れ・指導がある。平成9年度の教育実習はこの日報を発信する前日の16日から始まった。この発信は、中学生だけでなく大勢の教育実習生にもちょっと立ち止まって自問してほしいと願ったもの。

 

〇 【ある病院の院長先生に、会議後質問させていただく機会があった。人体に関するお尋ねをしたところ、「そこはまだわかっていないんです。」と即答された。わからないことであるということにも自信を持っておられる姿に、プロのプロたる一端をみた。】(6月19日)

この話は理科の教科会で披露したことがあったが、その際、是非いつか「日報」でも紹介してほしいとリクエストをいただいていた。最先端の研究に精通していなければ、「まだわかっていない」と断言できないわけで、それを自信持って言えることのすばらしさを生徒諸君にも感得してほしいと願って発信したものである。

 

〇 【ほんの1分間でも、40人みんなでゴミを拾えば、1人で40分間拾う仕事ができる。】(7月3日)

当時40人学級が学年6クラス、全校生徒数は720名であった。一般的には、集団が大きくなるほど気持ち一つにという取り組みが弱くなる傾向があるが、学校教育の現場では集団の大きさを活かす実践が山ほどある。集団の育ちは重要で、そこがおかしくなると「赤信号、みんなで渡れば・・・」となってしまうこともあるので、気を付けたい。

 

◇ 【私は皆さんに「頑張ってね」なんて言わない。なぜなら、人間は頑張らなきゃいけない時は自 然に頑張るから。~富永房江さんの講演より~(8月18日)

 富永房江さんを学校にお招きしてご講演いただいたときのことばである。富永さんのお話は何度か拝聴しているが、毎回心のエネルギーが増大する。いろいろな人から頑張れと言われることが多い生徒たちは、「人間は、頑張らなきゃいけない時は自然に頑張る」というお話を新鮮に受け止めたようだ。講演後、教官室に見えた生徒に感想を求めた時の返答は今も記憶に新しい。「自然に頑張る自分であるか、振り返っています。」とのことであった。

 

〇 【3年生が授業後質問に訪れる姿を多く見るようになった。稲穂が実るのと期を同じくしているようだ。】(8月22日)

時は8月下旬、夏休みが明け、「充実の2学期」が始まって1週間ほど経った時の日報である。学校の周囲に広がる田園風景も、出揃った穂が垂れ始め「実り」を感じさせるそれに変わってきていた。そんな中、授業後研究室に質問に来る生徒(特に3年生)の姿が稲穂に重なったのだ。

「まず、授業を真剣勝負で」・・・私はよく生徒諸君にこう投げかけていた。そして、わからなかったり腑に落ちない点があったりしたら絶対にそのままにするなと指導した。授業中に質問して解決するのがよいが、機を逸した場合は授業後もしくはその日学校にいる間にアクションを起こすようにと、しつこく訴えたものである。