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Vol.91「今日のことば」~1~
【 コラム 】 2024.09.18
学びの応援コラム
楜 澤 晴 樹
令和6年9月18日
NO.91 「今日のことば」~1~ |
先日、ある書籍を探して書棚を調べていたら、「平成9年度日報」と明記した1冊のファイルが私の目に留まった。私が信大附属長野中で教務主任として毎日作成した日報である。4月3日の入学式に始まり、年が変わって3月20日の卒業式に至る計227日間、毎日の日課その他をまとめ発信したもの。全クラスと全教職員に毎朝配布した。
その冒頭に「今日のことば」を掲げた。前日にそれをひねり出すのは簡単なことではなかったが、題材を探すことも、また時々は毛筆の手書きのことばを認めるなど嗜好を凝らすことも楽しい日課となって227号を積み上げた。
さて、そんな足跡を振り返るのも一興で、しばし探し物と時の経つのを忘れて書棚の前に座り込んでしまった。本号から何回かに分けて、その「今日のことば」のいくつかを拾って紹介してみようと思う。以下の記号によりことばの出所を示し、また、それぞれを回想しながら若干のコメントを付すことにする。
(〇:私、 □:生徒、 ◇:その他)
◇ 【一人一人にすべての可能性がある。その可能性を大事にする意味で、自分にも他人にもレッ テルを貼るな。~入学式 渡邉校長先生のお話から~】(4月5日)
これは、時の信大教育学部教授で長野中校長を兼務された渡邉時夫先生より入学式でいただいた話から抜粋したもの。そういえば本コラム38号で、在りし日の我が母が母親文庫の文集に寄稿した「駄目のレッテル」を紹介したが、同様な主旨である。子どもたち自身も、そして子どもに関わる大人も大事にしたい姿勢である。
〇 【読書の時間・・・全校がシーンと静まり返り、心のエネルギーが高まる時間です。】(4月12日)
時の副校長今村資泰先生の提案で、この年度から朝の10分間読書を始めた。今村先生に、いつから開始したらよいか教務主任としての考えを求められ、「入学式後の初日からやりましょう。全校一斉の朝読書で学校生活がスタートするという新たな取り組みです。初々しい空気の中、初日から位置付けたいと思います。」と答えた。もちろん、新入生には入学式の日の学活等で必要な説明をし、学級文庫も活用することで踏み切った。朝、10分という短時間だが、「動」の前に「静」があることのよさを、初日から味わった。
〇 【主役を演じないまでも主人公であれ。~授業はもちろんですが、例えば昨日の全校集会では、一人一人が「主人公」であったでしょうか。~】(5月9日)
授業をはじめ、様々な活動に主体的に取り組むことがいかに重要であるか、これまでも力説してきたところであるが、そこを「主人公であれ」と呼びかけた。時には学習集団の中で問題解決のキーパーソンになることもあるが、そんな主役を演じなくても自分ごとの問題意識をもって自分なりに思考し、判断し、必要な表現をする学びは Active Learning になる。
〇 【私たちが先にやってしまったので、発表できなくなってごめんね。~音楽の授業でグループ発表をした際、時間の都合で発表できなくなってしまったグループに向けて発せられた言葉です。~】(5月20日)
前日、音楽の授業を参観した。後半はリコーダー演奏の発表の時間となった。教師が希望を取りながら4つのグループの発表順を決めたが、3番目については2グループが希望したため、代表者のじゃんけんに拠った。さて、最後の4番目のグループが発表に入ろうとした時、残念ながら授業終了のチャイムが鳴ってしまったのである。じゃんけんに勝って発表できたグループが発表できなかったグループの気持ちに寄り添って詫びた光景は、参観していた私たちの心を打った。演奏の美しさを倍増させるそれであった。
〇 【廊下を無心で拭いていたら、そこを通る人は拭いたところをまたぐようにして通ってくれた。廊下を責任感で拭いていたら、そこを通る人のことばかり気になった。】(5月22日)
生徒がひたすら床を拭き上げる姿に劣ってはなるまいと、私も教官室前の廊下を一生懸命拭いた。そこでこんな発見をしたのだ。
□ 【点数なんて、と言う人がいるが、その点数をとることにさえ努力できない人間に、いったい何 ができようか。~ある女子生徒が迷いから脱したときの発想~】(6月2日)
テスト点について、生徒たちは実に様々な想いをもっている。テスト結果がとても良好なこの女子生徒も、一時期、点数にこだわっている自分のあり方に迷いを抱いていたようだ。そこから脱してたどり着いたところを話しに来てくれた彼女は、完璧に輝いていた。